赤身か? 白身か? - 好きにならずにいられてよかった〈1〉

好きにならずにいられる理由を探してホッとしている。

好きになられるはずがないから、傷つく前に早々に退散。
ホントはどーでもいい理由にかこつけて。

好きにならずにいられてよかった、恋に落ちてもよかった瞬間。

完全ノーマーク男子が崎陽軒のシウマイ弁当について語り始めたときだった。

「シウマイ弁当っていったら俺、シウマイじゃなくてアレが好きだなー」

はいはい。特別な嗜好を持つ俺アピールかしら聞きましょう。

「なんだっけアレ……」

わかってる。キミだけじゃないよ皆好きだよ、アレでしょどうせ、杏。

「なんていうんだっけ」

だから杏で……

「白身魚!」

え?

「なんか入ってるじゃん、魚の切り身を焼いたか煮たかの。アレ好きなんだよねー」

 
回答さえノーマークだった魚好きな一面。私もシウマイ弁当の中で一番好きな具だよ! 

もはや好感しか湧かない。完全ノーマーク男子が、食の嗜好が合う"好感触"男子に変わった瞬間だった。

 
でも……それマグロの照り焼きだから正確には赤身魚なんだよね。そういうところはどうかなぁ、豚肉と牛肉の違いまでは分かっても、豚肉とマグロ肉間違えそうじゃない? 

(や、ホントはそんなことどーでもいいの。あなたがおいしいなら私もうれしい。でも……引き返すなら、今かな。涙 食に関しての意識差はいずれ、二人の関係に大きなひずみを生むに違いないんだ。)

シウマイ弁当だけに、これでオシ(ウ)マイ!

恋に落ちてもよかった。

けれども、好きにならずにいられてよかったことにするのだった。


ミームの箱船|大島智衣

〜ミーム(意伝子)の箱船を漕いでいく〜 脚本家、エッセイ・コラムニスト 大島智衣のwebサイト